音速きなこおはぎ

技術ブログです。

普通の日の普通になった人

毒にも薬にもならない話です。

小腹が空いたと感じた私はいつものように、近くの薬局へ水とお菓子、それと日用品(紙コップが切れそうなので紙コップと、ボサボサになってきた歯ブラシ)を買い求めようと立ち上がりました。しかし今は穏やかな日曜の午後、心を無にして昼寝するにはぴったりの春の陽気でした。動き回る気力がどこまでも削がれてゆきます。

逡巡しているうちに、今日は投票日であることと、そろそろ実家へ仕送りしたい時期であることをついでに思い出しました。怠惰な人間というものはタスクがあればあるほど動きが鈍くなります。私はいよいよ面倒になって今日はダイエットという大義名分のもと空腹を我慢してでも引きこもろうとしました。

が、結局は善良な小市民としての意識が後押しし(ということにして)、重い腰を上げました。

薬局だけなら歩いて向かうのですが、今日は投票所と近くのATMを周るため、自転車を使って参ります。荷物が増えるので、薬局は最後です。

まず向かったのは投票でした。候補者の情報をネットで調べようとしましたが、候補者の名前が羅列されているばかりでよくわからなかったので、現地でポスターを見てフィーリングで決めることにしました。

一人だけ選挙カーで連呼しててうるさかった記憶があったのでその人以外にするのは決めていましたが、ポスターも相当な数があるのでまともに選ぶのは面倒です。結局議員を何期だか勤めていると書いてあった普通そうな人に投票しました。何期も勤めているということでなんとなく安定感を感じました。実際のところは知らないですが。

今の街のあり方に不満があるわけでもなし、現状維持で何も構わないと思っているので、気分次第では投票をサボるつもりでしたが、投票したくない人以外に投票するのは、投票したくない人の得票率を相対的に下げることなので、これは意義のあることです。帰り道でそんなことを考えて、重い腰を上げた自分を褒めそやすことにしました。

続いて振込もいつも通り済ませました。

最後に薬局に向かいました。いつも通り買い物をします。店内は自分が見てきた中でも歴代トップレベルに混んでいました。それだけ日曜の午後に自分が外に出ることがレアなんだと思います。

でもいくら人がいようとやることは変わりません。いつも通り買い物を済ませていく中で、ふとこんなことを考えました。人間は前例踏襲で生きていく生き物なんだろうな、と。

読者の方に説明すると、私は常識を疑うのがたぶん好きな部類の人間です。みんなが当たり前だと思っていることに対して、いや実は発想を転換するとこうなんじゃないか? ここを改めればもっと便利に楽しくなるんじゃないか? と提案するのが私の得意分野であり、生きがいでもあります。

しかし多くの人間はそうではありません。常識に疑いを持たず、何も変わらない日常を過ごすことを是とします。私はそんな人のことがどうにも気に入らず、空気の読めない行動を繰り返す問題児でもありました。最近は丸くなってきましたが。

そこで薬局の中で一つの仮説にたどり着きました。人間は常識に対していちいち疑いを持っていたら、かんたんに意志力を使い果たしてしまうのではないかと。常識を疑わないのは、日常で余計な意志力を消費しないための生存戦略なのだろうと。

その証拠の一つが投票です。無難で普通な人間に投票するのは最も頭を使わずに済む行為です。今日の私がまさにそれを体現していました。ついでに、普通の人に投票する自分自身もまた、普通の人であるという安心感を得られるという作用もあります。

この仮説が正しければ、私ももはや常識を疑うことをやめた人間の一員です。そう考えると、アイデンティティが一つ失われたようで少し悲しくなりました。

そんなことを考えながら買い物を済ませました。水、お菓子、紙コップ、バスマジックリン。お会計を済ませたので、それらを袋に詰めて帰ります。は、バスマジックリン

お会計を済ませてから初めて気づきました、自分が歯ブラシではなくバスマジックリンを購入したことに。あまりに頭を使わなさすぎて、より頻度高く購入しているバスマジックリンを無意識に購入していたことに。

ショックでしたが、まあ使うものではあるので、買い直すのも面倒だしそのまま歩いて帰りました。頭を使わずに生きていることを図らずもまた体現してしまったなと思って萎えましたが、あまりに綺麗に体現してしまったのでちょっと愉快でもありました。

さてもうすぐ家に着くというところで、一台のスポーティーで高級そうな自転車が走っているのを見ました。この人はきっと自分とは対照的なほどアクティブなんだろうなと思いました。自分はそうではないから、さっさと帰って休もう。は、自転車?

そうです、私は自転車で家を出たはずです。それなのになぜいま歩いているのか? どこで間違ったかを慌てて思い出します。ATM前に置いてきた? いや、薬局に自転車に乗って入った覚えがあります。薬局に置いてきたんだ。

普段薬局には歩いて向かいますから、どうもその癖で店を出てそのまま歩いて帰ってきたようです。頭を使わずに生きていることを図らずもまたまた体現してしまったなと思って今度こそひどく萎えました。

ほとんど家の前でしたが、引き返して薬局へと戻り、自転車に乗って帰ってきました。

結局、頭を使わなかったおかげで徒労が増えてしまいました。あまりに滑稽だったので、こうしてブログに書き連ねています。冷静になって振り返ると、買うものを間違えたのと自転車に乗り忘れたのはただのボケのような気がしてきました。まあ、そういうこともあるさ。

でも今度はブログを書くのに頭を使いすぎて後悔しているので、もう寝ることにします。おやすみなさい。幸い、今は穏やかな日曜の午後。心を無にして昼寝するにはぴったりの春の陽気です。