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フリーゲームレビュー「E-999」 - この世で最も優しい〇〇の壁【PC】

unityroom.com

すごいゲームだった。間違いなく新しい体験だった。

開始5秒で魅力を理解できるし1周10分程度なので、まだ遊んでない人は 今すぐ 遊んできてほしい。頼む。

あとタグが「テキストエディタ」なのでエディタに拘りがある人も全員遊んでほしい。

以下、ネタバレ全開でお送りします。

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この世で最も優しい、第四の壁を越えるゲーム

「第四の壁」を打ち破る、つまりメタ要素があるゲームは枚挙にいとまがない。OneShot, Undertale, DDLC, Inscryption, などなど...。

それらは基本プレイヤーを「脅かす」機能を果たすことが多い。ゲームの中の出来事と安心しきっていたプレイヤーの現実に侵食し、常識と安寧を破壊することができるからだ。

しかし、E-999 は違う。最初こそ驚くかもしれないが、少女と思しき人物の物腰は柔らかく、こちらを脅迫するような姿勢は見られない。

「手紙」というモチーフも絶妙で、脅かされるというよりむしろ、第四の壁越しに少女と心を通わすことがこのゲームのメインとなっている。その心を通わす過程が、現実に侵食してきているからこそ妙な生っぽさを帯びる。

彼女はわれわれの受け答えをしっかり「読んで」くれているし、想いの込められた文章とあいまって、こちらの感情を揺さぶってくるのも忘れてはいけない。

彼女と交流する手段が手紙による文通という非常に情報量の限られた手段であることにも注目したい。われわれは扉の向こうで起こっている事実を一切観測することができない。与えられるのはテキストだけ。それによって、断片的な情報が想像力をかき立ててくれるし、手紙の主が「信頼できない語り手」の役割を果たすこともできる。ラストの展開もなかなかえぐかった…。許せねえよADMIN…。

このゲームはきっとゲーム制作者ほど驚きをもって迎え入れられるだろう。こんな「手段」があったのかと。

間違いなく、新たな体験を切り拓いたゲーム

同時に、ゲーム制作者であるほど、もっとああしたらよかったのに~といった妄想が次々浮かんでくるだろう。筆者がパッと考えただけでも、少なくともコマンドのくだりはもっと自由度を増やしたいし、END3はもっと別の条件にするだろうし、いっそ相手が本当にAIで応答を考えてくれたらどうだろうか、などと夢想する。

しかし、こういったアイデアのいずれも、E-999 の編み出した新たな体験、表現手法、インターフェース、の偉大さの前には所詮二番煎じだ。E-999 の最も偉大な点は、何度も述べるようだが、脅かすでもなく優しさをもって第四の壁を破るという新たな表現なのだから。

だからこそ「新たな体験を切り拓いた」と称えたい。

おしまい

ゲームの作り込みがすごいとかでもなく、使っている技術、アセットはシンプルで、ただただ「発想の勝利」。脱帽しました。

一週間でこんな偉大なゲームが出てくるとはまだまだ世の中捨てたもんじゃないですね。

当ブログでは今後も引き続きインディーゲーム中心に好きなゲームのレビューを書いていくつもりなので、次回もお楽しみに。ではまた。